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自閉した神

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至聖所の入口で、体を巨大な柱に貫かれ、朽ちかけた天使は言っていた。

“この先には、かつて世界を創造維持する神であったものが存在する。ある時神は一人の人間──男を愛し、その男もまた神を愛した。
しかし、二人が結ばれることは、神がその神格を失うこと、秩序ある世界の崩壊を意味した。二人はそれを良しとした。
一つになった二人は悠久の眠りに入り、世界は朽ち果て、今尚歪み続けている───”

今、私の目の前に在る、かつて神であったらしき男女の像は、幸せそうな微笑みを浮かべて抱き合っている。
世界を滅ぼした忌まわしき神だというのに、その姿を見ていると、私はなぜか安らかな気持ちになった。
あの朽ちた天使は、ずっと独りで彼らを見守っていたのだろうか……。彼らのことを語る天使の声は、どこか皮肉めいていた。
 

* * *

また一編、大熱波関連のSSが見つかりました。ファイルの記録によれば2012年のもの。
SSというか、大熱波絵のキャプションとして考えた文章です。画像は恐らくそのイメージスケッチ。

  • 2016/05/17(火)
  • 考察&萌語り&SS

大熱波記念の散文詩

 
 
震える指先が乾いた土に触れる
この地上のありとあらゆるものを風化させていく風が、
私の頬を優しく撫で、背に生えた翼をなびかせる

傷の痛みは、今は歓喜を呼び起こし、したたる血の匂いは甘美であり、
今まさに己の肉体をもって知る“命”の感覚に、私は恐れ慄いた

体を支える彼の細い腕が、大地のごとく頼もしく感じられ、
私はその中で、たった今生まれたばかりの雛鳥のように、震えていた

“世界”になった彼はしかし、空でも、大地でも、風でもなく、
彼自身の腕で、私を包み込んだ

 
ああ、それにしても、なんという美しい空だ

かつて天に太陽があった時、
地平線から昇りまた没していくその瞬間の、時を止めたような空

世界は今も燃え続けている
罪人たちはこの辺獄で、熱のない業火に、永遠に焼かれ続ける

嘆きながらも、彼らはこの赤い空の美しさを讃え、
神は一層地上を醜くする

 
視界がぐにゃりと歪み、
目に映る全てのものが、溶け崩れ、混じり合った

自らもまた、その大きなうねりの中に呑み込まれて行くのを感じながら、私は安らかに目を閉じた

暗闇の中でも、彼は物言わず、ただその腕で私を抱いていた
いつまでも────

 
* * *

2013年の大熱波頃に書いた散文詩が見つかったので掲載。
この詩に対応する絵を投稿するつもりだったんですが、未完成でした。

  • 2016/05/13(金)
  • 考察&萌語り&SS

大熱波に向けてBAROQUEの世界を再考する#3

私は、バロックの世界は、ゲームクリア後も、ずっとあのままの状態で現状維持か、更に歪んでいくものだと考えています。
でも、どうなんでしょうね。
一応、創造維持神は正気を取り戻した訳だから、漫画版のラストみたいに、「世界は少しずつ正常化されていく」と考える事はできます。
でも、ゲーム本編のラストで、わざわざ創造維持神が「歪みを抱えたままで」とか「このまま突き抜けましょう」とか言ってるので、
個人的には、やはりそのままだと思うんですよ。
うーん…他のファンの方々は、ゲームクリア後のバロック世界を、どう考えているのでしょうか。気になります。

 
漫画版のラストは、一見希望が感じられるけども、結局は無限ループになっちゃうと思うんですよ。
だって、上級天使が自分の野望を諦めた事くらいしか、変わってないじゃないですか。
いや、あれじゃあ諦めがつくどころか、悔し涙を流すレベルだと思います。
あのどうしようもなく歪んでしまって、再起不能の世界だからこそ、上級天使も「もうどうでもいいや」って諦められたんじゃないですか。
主人公の言葉を借りれば、「繰り返す事こそが罪」なんじゃなかったのか、これじゃあ矛盾してるじゃないか、と私的には思う訳です。

そんな訳で、いつか風の噂で存在を知った、上田先生のバロック同人誌を、今とても読んでみたいのです。
公式の漫画版とは少し、結末のニュアンスが違うらしいんですよ。
一体どんな内容なんだろうなぁ…。気になります。

  • 2013/04/16(火)
  • 考察&萌語り&SS

大熱波に向けてBAROQUEの世界を再考する#2

バロック前史の中で、“上級天使の顔はフミに少し似ている”というような描写を見つけた時は、衝撃でした。
(シンドロームではカットされている文章です)
フミは謎めいたキャラクターですが、そんなに上級天使との関係性を仄めかされたら、ますます彼の正体が(個人的に)気になってしまいます。

彼は一体、なんなんだろう……まさか、上級天使のクローンとか?
いやいやいや…、流石の上様でも、自分のクローンは作らんて。
(あっ、でも完璧な“知覚”がなかなか生まれなくてイラついてたとしたら、作っちゃうかもしれないな。
上級天使ってある意味、世界でただ一人の死なない“知覚”な訳だし)

蛇足ですが、PS版公式サイトで読める「BAROQUE▼INTERLUDIUM」では、フミの目の色は「虹色」ではなく、「薄茶色」と描写されています。
シンドロームでも、出て来るスチルの目が虹色に見えるだけで、別に「虹色」とは表現されてないんでしたっけ?
文章自体は「虹彩が淡くなる」とか「視線が宙に浮く」とか、そんな感じの表現だったような気がします。
バロックじゃない時の目が薄茶色って事なんかな?フミは全体的に色素薄そうなイメージがあるし…。

 
フミの件以外にも、バロック前史には、色々と注目すべき点がありまして、
シンドロームよりも、ルビの容姿がもっと詳しく書かれていたり(背が低い・睫毛がまばら)、
スペシアル・ハンターの制服の色が違っていたりするんですよねー(黒や濃紺ではなく、えんじ色)。

翼の青年については、シンドロームでは容姿が主人公と酷似してて、「もしかしたら?」というくらいの印象だったけど、
前史だと、完全に主人公で確定な感じの、書かれ方でしたね。
翼の青年は(レイカ編では)コリエルのリーダーだし、大熱波が起こる前にマルクト教団を脱退しているので、
バロック本編の主人公と同一人物と考えると、辻褄の合わない部分も結構ありますが…。
まあなんというか、「あり得たかもしれない未来の一つ」って事なんでしょうね。バロックの世界は、多層ですし。

そんなような事を色々と考えているうちに、バロック前史およびシンドロームのストーリーは、
「大熱波が起きなかった世界の話」なのではないかと思えて来ました。
少なくとも、バロック本編のような形とタイミングでは、起きなかった世界なんではないかと。
もしくは、上級天使の野望を打ち砕ける人間が現れず、ゆっくりと世界が崩壊していくディストピア、だという気もします。

シンドロームの後日譚を妄想していると、楽しいです。続編が書けそうな終わり方ですよね。

  • 2013/04/13(土)
  • 考察&萌語り&SS

大熱波に向けてBAROQUEの世界を再考する#1

去年復刊ドットコムで購入した、バロックワールドガイダンスを読み返していたんですが、
これ本当に読み物として面白いし、二次創作の助けになる本ですね~。
読む度に新しい発見があります。ファン必携の一冊だな。

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上の画像は、「バロック前史」の時系列を表にしたものです。
なんでこんなものを作ったかというと、
自分のようにリアルタイムで追って来られなかった人は、
ゲーム本編とその派生作品の、設定や時系列の細かな部分が、全てごちゃ混ぜになってしまい、
読んでて頭が混乱してくるんですね。
なので個人的な需要から、基本的な情報を整理して、いつでも参照できるようにしたいと思ったのです。

以下はバロック前史についての自分の認識ですが、
間違っていたらスイマセン。。。

バロック前史 (正式名称「BAROQUISM▲SYNDROME」)

初代BAROQUE(セガサターン版)の発売前に(恐らく宣伝の一環として?)
同ハードの情報誌で連載されていた、BAROQUEのスピンオフ小説。著者は劇作家の清水マリコ。
後に発売されるBAROQUE▲SYNDROMEのプロトタイプとも言うべき内容で、
これにPS版公式サイトで読める「BAROQUE▼INTERLUDIUM」のエピソードを追加・再構成し、
ノベルゲームに仕上げたものがBAROQUE▲SYNDROMEである。

「バロック前史」には、個人的に、色々と注目すべき点があります。
それについて、次回の記事で詳しく書きたいと思います。

***

ところで、今日がエイプリルフールだって事、すっかり忘れてました…。
相変わらずサービス精神皆無のサイトですみません。
そのくせ自分は、twitterで人様のエイプリルフールネタを見て、ニヤニヤしていました。
ジョークを言うのは苦手だけど、見るのは好きです。特にブラックなやつ。

遅ればせながら27日の拍手の方、どうもありがとうございました。
一言だけでしたので、お名前を載せるのは控えさせて頂きますが、いつもありがとうございます。

  • 2013/04/01(月)
  • 考察&萌語り&SS

上級天使

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自分も他人も愛せない人

 
以下長々とした語り

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  • 2013/01/31(木)
  • 考察&萌語り&SS

つぶやき

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生贄の種類は2つある

・サクリファイス
その共同体にとって最も大切なものを捧げ、神の不満を解消する
生贄は丁重に扱われる神聖な存在

・スケープゴート
その共同体にとっての敵を作り出し迫害する事で、共同体の不満を解消する
生贄は虐げられる穢れた存在

大熱波前の主人公はサクリファイス 大熱波後の主人公はスケープゴート
しかしどちらも結果は逆になっている 主人公は彼を贈った者たちの期待を裏切る
1回目は上級天使の妨害によって、2回目は、もはや維持するべき共同体が存在しなかったから

こう考えると上級天使って感情では主人公を嫌ってるけど
行動ではむしろ主人公を救ってるんだよなあ
twitterでちょっと語った「上級天使が記憶を消したから主人公は救われた」っていうのもそれ

上様は天使か悪魔か分からない存在だね本当に
そんな中途半端だから最後は彼自身がスケープゴートになっちゃったんだよ
でも主人公は上級を“追放”した訳ではなかった
そもそも「穢れ」を排除しようとしない そこがバロックの優しさだ
「歪み」ってつまる所、穢れとか、原罪とか、混沌とか、そういうものだと思う

  • 2013/01/13(日)
  • 考察&萌語り&SS

上級天使考察

24日と今日の拍手の方々、どうもありがとうございました。

***

ブログの見た目をちょっと変えたいなー。
拍手の絵も描きたい。バナーの絵も変えたい。
やりたいことだらけだ・・・。

今、絵が思うように描けないので、先にこの前言ってた上級天使の考察を載せる事にします。
長いので続きから。


注意
他人の設定を読む事で、自分の中のキャラクターに対するイメージが傷つく恐れのある方は、読まない方が良いです。
また架空のキャラクターを、実在の人間と同じように考察・解釈する事に抵抗感を感じる方も、読まない方が良いです。
あくまで私の頭の中の上級天使像がこうだというだけの話で、人様に押し付ける意図はございません。私はどんな上様も好きです。

***

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  • 2012/12/27(木)
  • 考察&萌語り&SS

12号考察

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私にとって、12号はミステリアスな人です。
主人公なんだけれど、客体的に書いた方が、しっくりくるんです。
今12号メインのSSを下げているのは、彼を主体的な視点で書いている事に、違和感を感じたからです。
あんなふうに、理屈っぽく自問自答するタイプではなさそう。もっと極端に感覚的に生きていそうだ。

恐らく、12号の内面というのは「これがこうなって」と分析できるようなものではなくて、
ただ漠然とした、悲しみや罪悪感といったものが、渦巻いているだけなんでしょうね。
ある意味では、自分自身ですらうまく処理できない感情を、彼は抱えているという事で、
そういう所が、よりいっそう破滅的に、悲痛に見えるのだと思います。

12号の生き方は、“鏡”のようなものだなぁと思います。
ダァバールがきっかけになって、初めて本来の自分を取り戻せたのではないかと、思います。
それまでは、他者の鏡像を、自分だと思い込んでいた(思い込まされていた)のではないかと、思います。

 

最近ブログにアップしている絵は、
コピー用紙にシャーペンで描いたものをスキャンして、少し加筆修正してからアップしているんですが、
このレベルの落書きだと、最初からデジタルで描いた方が、見栄えが良いかも・・・と思いました。
自分は描いたり消したりする回数がとても多いので、絵が完成する頃には、いつも紙が満身創痍になってます。
デジタルの方がいいな、うん。
でも最近長時間PCの画面を見続けるのが辛い。

  • 2012/08/27(月)
  • 考察&萌語り&SS

13号考察

お兄ちゃん練習。ぶっちゃけ弟と描き分けできてない。

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ここの所調子が悪く、ちゃんとしたイラストは描けないのですが、
このような落書きはけっこうストックがあるので、しばらくの間それをアップしていこうと思います。

 
─ここから私のバロック─

個人的に13号は、12号と上級天使を足して2で割ったイメージです。
12号の事は大好きけど、上級天使の事は大嫌いです(同族嫌悪というやつ)
基本的には無口で冷静で、頭の切れる人なんだけど、
自分と弟の2人だけの世界が第一なので、それを脅かす者には敵意を剥き出しにします。
12号のような柔軟さが無いので、強くはあるけど脆い人です。

上級天使との違いは、人を愛せるか否かです。
13号は愛する弟の為なら自己犠牲も厭わない、
12号の願いなら、自分自身の信念や主義主張みたいなものも、捨てられる人です。
(上様はそういうの無理だと思う)

ただし救いようのないブラコン。口には出さないけど、かなり本気で12号の事を想ってて、依存してます。
子供の頃は大人びて見えるけど、いざ大人になったら、色々と問題が出てくるタイプだと思います。
だから、彼が分離手術の時点で死んでしまった事は、ある意味では幸せだったんだろうと思うな。
12号の心に自分の存在を焼き付けられたからね。

  • 2012/08/26(日)
  • 考察&萌語り&SS

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