至聖所の入口で、体を巨大な柱に貫かれ、朽ちかけた天使は言っていた。
“この先には、かつて世界を創造維持する神であったものが存在する。ある時神は一人の人間──男を愛し、その男もまた神を愛した。
しかし、二人が結ばれることは、神がその神格を失うこと、秩序ある世界の崩壊を意味した。二人はそれを良しとした。
一つになった二人は悠久の眠りに入り、世界は朽ち果て、今尚歪み続けている───”
今、私の目の前に在る、かつて神であったらしき男女の像は、幸せそうな微笑みを浮かべて抱き合っている。
世界を滅ぼした忌まわしき神だというのに、その姿を見ていると、私はなぜか安らかな気持ちになった。
あの朽ちた天使は、ずっと独りで彼らを見守っていたのだろうか……。彼らのことを語る天使の声は、どこか皮肉めいていた。
* * *
また一編、大熱波関連のSSが見つかりました。ファイルの記録によれば2012年のもの。
SSというか、大熱波絵のキャプションとして考えた文章です。画像は恐らくそのイメージスケッチ。