震える指先が乾いた土に触れる
この地上のありとあらゆるものを風化させていく風が、
私の頬を優しく撫で、背に生えた翼をなびかせる
傷の痛みは、今は歓喜を呼び起こし、したたる血の匂いは甘美であり、
今まさに己の肉体をもって知る“命”の感覚に、私は恐れ慄いた
体を支える彼の細い腕が、大地のごとく頼もしく感じられ、
私はその中で、たった今生まれたばかりの雛鳥のように、震えていた
“世界”になった彼はしかし、空でも、大地でも、風でもなく、
彼自身の腕で、私を包み込んだ
ああ、それにしても、なんという美しい空だ
かつて天に太陽があった時、
地平線から昇りまた没していくその瞬間の、時を止めたような空
世界は今も燃え続けている
罪人たちはこの辺獄で、熱のない業火に、永遠に焼かれ続ける
嘆きながらも、彼らはこの赤い空の美しさを讃え、
神は一層地上を醜くする
視界がぐにゃりと歪み、
目に映る全てのものが、溶け崩れ、混じり合った
自らもまた、その大きなうねりの中に呑み込まれて行くのを感じながら、私は安らかに目を閉じた
暗闇の中でも、彼は物言わず、ただその腕で私を抱いていた
いつまでも────
* * *
2013年の大熱波頃に書いた散文詩が見つかったので掲載。
この詩に対応する絵を投稿するつもりだったんですが、未完成でした。